
ひょ んなことから、以前、友人に美味しいと薦められたフランチレストランにランチに行った。実は結婚記念日にでも行けたらと、このレストランの開店時間 をチェックしに、車を止めただけだった...のにダニエルがいきなり入ろうと言い出したのだ。いつもとなんら変わりがない土曜日。子供達は遊び着にサ ンダル、ダニエルは、ポロシャツに膝丈のショーツ、私はTシャツにスカートというイデタチ。この格好じゃぁまずくない?と言いながらも、ランチだからまぁ いいかと子連れでぞろぞろと入ってしまった。

ツ ヤツヤした黒のスーツを着たオーナーらしき人が出迎えてくれた瞬間に、しまった、場違いな格好している私達...と思ったけれど、遅かりし。もう後には引 けない。見渡すと白いテーブルクロスにグラスがセットしてある。こういうのを見るとかなり緊張する。初老の夫婦3組が、窓辺のテーブルに座っており、店の 中央の大きなテーブルにフランス人のファミリー(大所帯)が、子連れでわいわいやっていた。うち以外にも子供がいると思うとちょっとホッとしたけれど、 せっかくでカップル(子供抜き)でランチデートに来ている人たちもいるだろうに、子連れはなんとなく申し訳ない気がした。

「フ ランスは大人社会なので、子供はベビーシッターに預けて大人だけの食事を楽しむことが多々有る」とどこかで読んだのを思い出したのと同時に、「子連れだか らって遠慮なんかしなくていいわ。子供がいるというのはごく自然なことなのだから、レストランは子連れでもきちんと対応するべきよ...」という南仏のと あるInnの奥さんの言葉がよぎった。どちらももっともだけど、この場合、後者を唱えながら乗り切るしかないと思った。
さて、慣れないテーブルの セッティングに、子供達も私達と同じくらい緊張しているのかと思ったらそうでもない様子。マリは、椅子を引いてもらって座ったはいいけど、いつものごと くサンダルを脱いで、椅子の上に正座をしてしまった。かなりきついフランチアクセントの英語で「お嬢さん、靴を落としましたよ...」と言いかけたウェ イターの人は、「なるほど、脱いだというわけですね」と笑った。すっすみません、マナーも何もあったもんじゃないです。(^^;)

で も見事!このウェイターの人の身のこなしのスマートなこと。流れるようにスムーズに仕事をこなしてゆく姿が美しいとさえ思った。お喋りもウィットに富ん でいておもしろいし、適度にフランス語を混ぜて会話の練習(?)をつきあってくれる。こんなにお店が混んでいるのに、この余裕は何?忙しさが表情に出ない のはなぜ?何よりびっくりするのは、テーブルでの会話を一度も中断させることなく、水やパンのお代わりを持ってくることだ。アメリカのレストランでは、 テーブルでの会話をしょっちゅう中断させられる。それが普通なので、いきなりガッと水さしで目の前のグラスに水を入れられても、特に驚かないが、ここで は、まるで会話が一段落するのを見計らっているかのように、何もかもがタイミングよく出てくる。極めてるなぁと思った。「修行してるなぁ」とダニエル。彼 の大好きな言葉「修行」が出た!(^^)
料理のほうは、あまり気どっていない南仏風の家庭料理というイメージだ。なぁんて、パリのたくさん星がついたレストランでフランス料理を食べたことなどな いので、正直、何をどんなふうに評価をしてよいのかわからない。(^^;)ま、でも、ランチメニューは、ビストロ料理という感じかな。子供 達はクロックマダム、ダニエルは、オムレツとラタトゥーユ、私は貝柱のブラッドオレンジソースとアスパラガスとレモンのリゾットをいただいた。どれも美味!
それにしても、フォークとナイフで悪戦苦闘していた子供達。しまいには、パンを手に持ってかぶりつく始末。あんまり美味しそうに食べているので、まっいいかとそのまま 放っておいた。見てみぬふり。その姿を見てウェイターの人は、「子供達にも気に入ってもらえたようで嬉しい」と言ってくれたけれど...やっぱりテーブルマナー、教えないと なぁ。
さて、お楽しみのデザートは、グレープフルーツとローズマリーのシャーベット、シュー皮に入ったアイスクリームのチョコレートがけ、そしてクレム・ブルレー。この中でのおすすめは、クレム・ブルレー。これにエスプレッソを頼んだら、言う事なし!
とにかく2時間かけてのランチ...しかもパンくずひとつ残さず完食なんて、ほんとうに久しぶり。心ゆくまで、楽しむことができたよ。来月の結婚16周年のアニバーサリーは、ダニエルと二人でここに来たいな。
以下はSaint Jacquesのウェブサイト
http://www.saintjacquesfrenchcuisine.com/