最近よく聞かれる...どんなホームスクールをしているのかと。そこでちょっと書いてみることにした。
先週からサマータームを始めた。ゆっくりとシラバスを作る時間もないまま、すでにカリキュラムが進んでいる状態。4月~5月の気候のよい時期には旅行に出たり、フィールドトリップと称して、アウトドアを楽しむホームスクールファミリーが多いけれど、うちは休暇無し。というか、今やホームスクールが私たちのライフスタイルになってしまっているので、やっていないとなんだか落ち着かない。
ところでうちのホームスクールのスタイルをダニエルはアジャイル(Agile)と呼んでいる。そもそも「Agile」というのは、敏捷とか、機敏に動き回っている印象を与える言葉だが、彼がここ数年押し通してきたソフトウェア開発の方法「Agile」と私のホームスクールに対してのアプローチがよく似ていると言うのだ。
ダニエルいわく、「Agile」というのは、ソフトウェアを開発する上で、そのソフトウェアの詳細な設計をコードを入れている最中に行う方法なのだそうだ。なので、実際のコーディングに入るまでは、設計に時間をかけない。そのためとりかかりが早く、顧客のフィードバックを常に取り入れながら、フレキシブルに対応してゆくことができる。コーディングに入る前に設計に時間をしてしまうのが「Waterfall」という方法で、工場のラインの流れ(この場合は水の流れという意味だけど)をソフト開発に見立てたものだ。この場合、たとえば早期に設計された工程のどこかで問題が生じれば、そこから先は足止めされるか、最終段階で不具合に気付き、修正に膨大な時間を費やすことになりかねないという。その上、顧客からのフィードバックにその都度対応してゆくための柔軟性がない。
ソフトウェア開発の専門知識がない私は「Agile」だの「Waterfall」だの言われても、ピンとこないけれど、確かに、早期に綿密な計画を立てて、それをそのまま実行することはまずないし、よいと思った教材は、手に入れたその日のうちに試してみる。うまくゆけばそのまま続け、うまくゆかなければその日のうちに返却する。先で使えるかもしれないと思いとっておくことはまずない。年度のはじめにClassical Conversationsの学習内容(たとえば、今年度は、アメリカ史や解剖学/からだのしくみ)から、大まかなゴールを決めて、子供達が興味を示すものを細かいUnit Studyにしてその都度掘り下げて学んでいる。最も大切にしているのは、子供達のフィードバック。これが、うちのAgileなホームスクール。
確かに数年前までは、私はWaterfall派(?)だったと思う。詳細なカリキュラムを早期に立てていれば、なんとなく安心し、計画どおりのスクーリングを試みた。ところが、実際にホームスクールをしてみると、早期に予見できなかったことが頻繁に起こって、気がつくと週末には帳尻が合わなくなっていたのだ。生きた人間相手だ。病気をすれば怪我もする。好き嫌いがあれば、ひとつのことに夢中になったりもする。段階を踏んでこのレベルに達したら、このトピックでこの教材を使って...というような綿密な計画は、あまりにも一方的で、、子供達の様子を観察していると、2ヶ月としないうちに、あれ?今さら(又は今)こんなのやっても仕方ないなと思えたりした。こんな場合、ソフトウェア開発のように、最終段階で、振り出しにもどるということはないにしても、子供達が一方的に与えられた学習課題を退屈に感じ、反応しなくなることがある。そうなると、なんとか子供達にやる気を起こさせようと、「これが終ったらおやつにするから」とか、「これをやったら次に進める」とか、教える側(うちの場合、一緒に学んでいる私)はなだめすかすことに膨大なエネルギーを費やし、ストレスを溜めることになる。なので、こういうWaterfall的な教え方(学び方)は、しないことにした。私のために...だ。
Agileなホームスクールをもっと具体的に例をあげてみると...
たとえば、ヤドカリの生態についてPagoo (by Holling)を読んでいるとき、生まれたばかりのヤドカリがDiatom(珪藻)と一緒にプカプカ浮いているというところで、サムはこのDiatomに興味を持ち、そこから珪藻についてのUnit Studyをすることになってしまった。こんな場合は、いさぎよくヤドカリを後回しにしてしまうのだ。また、今秋から学ぶであろうColumbusのことについて本を読んでいたら、なぜか彼の出身地であるイタリアの話しで盛り上がり、イタリアについてのUnit Studyが出来上がってしまった。地図や地名、火山、宗教や習慣、パネトーネ(パン)の由来などを調べ、来週にはパネトーネ(トニーさんのパンだそう)を作ることになってしまった。マリなんか、今は「新大陸発見」より、「パネトーネ」のほうが断然楽しいよう。(^^)なんだか道草をして遠回りばかりしているようだけれど、これがうちのスタイル。これが一番私にも子供達にも心地よい学び方になってきている。写真は、マリがパン(パネトーネじゃないけど)を切っているところと、サムがRed Sails To Capri by Ann Weil(イタリアの孤島でのストーリー)を読んで、赤いマストのボートを自分で塗ったところ。と、こんな感じだ。
こんな具合だから、ふつうの学校のスタンダードなシラバスをたどっている時間がない。なので先月のように、年に一度のスタンダードテスト目前に、「ひーっ、学校に行っているみんなはこんなことを勉強していたのかぁ」と、ひっくり返ることになる。(^^;)かといって、学年別のスタンダードなシラバスから最低限知っておくべきこと(?)をカリキュラムに前もって組み込んでおくことをするわけでもなく...12歳くらいになるまでには自然に身についているだろうと、かなり安易に考えている私は、Naive(ナイーヴ)なのかもしれない。まぁ、なにはともあれ、楽しくやっているので、今は深く考えずにこれでよしとしよう。(^^)
教材についていえば、主には本(ノンフィクションの物語など)を使っている。教科書は使っていない。あえて要点がハイライトされていないものを選んでいる。このことに関しては、また次回にでも。
いつだったかホームスクールママ友達から、うちのスクーリングは、Classical with Charlotte Mason influencesと言われたことがある。Classicalというのは、Classical Conversationsのグループに入っていて、特にこれといったカリキュラムはないけれど、大まかなアウトラインをそこから得ているからで、Charlotte Masonというのは、教科書的なテキストを使わずにふつうの本から学んでいるうちのスタルが1800年代の英国の教育者Charlotte Masonが推奨した教育法(ホームスクールの基本となったらしい)に沿っているからだという。ホントみんなよく勉強しているよね(私も見習わんとね)。で、せっかく周りが定義してくださったのならと、今そのCharlotte Masonの教育理念の本を読んでいるところ。1800年代の英語は、私にはちょっと難しい~。でも頷けることがたくさんあって、これがなかなかためになっている。余談だけれど、Charlotte Masonは、あの時代のダーウィニズム(ダーウィンが提唱した理論)の影響を受けているとはいえ、クリスチャンだ。イギリスの湖水地方に住んでいたそうで、なんとなくBeatrix Potterを思わせる。どうも私にはこの二人がダブってならない。
ところで上で紹介した本は、どちらも絶対にお薦め!特にCapriのほうは、ストーリーの展開がスローだけれど、この本に出てくるミステリアスなCoveにある洞窟(Blue Grotto)にいつかきっと行ってみたくなるはず。でも、マリにはこのストーリー、不評。男のばかりが出てくるからだとか。(^^;)そういえば昨日、近所にCapriというイタリアンレストランを見つけて、サムとマリが行きたがった。トマトソースが苦手な二人も、これでイタリア料理を克服してくれるかもしれないとちょっと期待している。(^^)
6 comments:
本当にすごいですよねぇ。ホームスクール。
いつも感心するばかりです。
さやじ
さやじさん、
なかなか楽しくやっています。
ただPEは、どなたかにお任せできればといつも思います。先週、コミュニティーのプール開きがあったのですが(まだちょっと寒いのに)、マリは「さやじせんせいのプールに行きたい!」と言っていました。忘れられないようです。私も行きた~い!
AgileとWaterfall、そんな言い方があったんですね~。なるほど。
そういう事なら、きこさんはずっと、Agile派だと思ってましたよ。
だから、シラバスを作ると言って、一体どんなシラバスになるのだろうと、すっごく興味があって、いつ日、見せてくださいとお願いしたんです。
正直言うと、きこさんがシラバスを作るというのが意外だったのですね。子供達に学ばせたいと思う事はいつも頭の中の引き出しに入っていて、それを良いタイミングで引き出すのだから、あえて書面にすることはしていないだろうと、、、(勝手なかんぐりでごめんなさい~!)
実は、私も去年あたり、まさにそう、「週末に帳尻が合わない」状態に。これじゃいかん、と思って、今年から、ホームスクールの仕方を変えました。
、、、と言っても、学校に行っているので、ホームワークと呼ぶべきですね。
私にも余裕ができたせいか、以前よりだいぶ楽しんでできるようになりました。苦手だったサイエンスや歴史にも興味を持つようになってくれて、、、。
歴史は、我が家は初めたばかりですが、「Magic Tree House」のトピックから、広がっています。今、やっと13巻、ポンペイの火山の話を読み終えて、背景を少し学んだところです。サムくんは、この小説のどんな所に一番興味を持ったのでしょうか?
メガンは、その都市の人が助かったかどうかを心配して、泣いていました。彼女はかなり臆病なので、歴史でもなかなか戦争のトピックに入れないでいます。(すぐ泣くから、、、)
これもいい思い出になりますね。
すみませ~ん、上のコメント、Yukikoより、です。
Yukikoさん
シラバス...ごめんなさい、まだ送っていませんね。一応あるんですよ。近いうちに送ります。(^^;)といっても、本当に本当に大まかにしか作っていないし、classical conversationsの24週間分の課題をまとめたものなのです。8月~4月の秋/春タームのために作っています。夏のタームは、その年の秋/春タームの準備(予習)のような感じで、とにかくliteratureを中心にユニットスタディをしています。
ところで、この大まかなシラバス、なんのために作っているかというと...もし、この先他州に引っ越すようなことがあった場合やNC州の法律が変わった場合に備えているのです。将来、出欠記録やテストスコア以外にも何らかの記録の提出を言われた場合に...ということです。ホームスクーラーが
Auditされることってたまにあるんですよ。一昔前は、係員の人が泊り込みで、ホームスクールの様子(家庭の様子)を調べにこられるというようなことがあったそうです。なので、使った教材やサムやマリのノートも保管しています。念のため。
Yukikoさん
Pompeiiは、去年の秋にサムと飛び出す絵本なるものを作ったのを思い出します。男の子だからでしょうかねぇ。火山が噴火して灰や岩がガラガラゴロゴロモクモクと街に一気に落ちてくるシーンを再現したがりました。(男の子って...^^;)その他には、その時代のPompeiiにいたローマ人の様子について学びました。朝からバスハウスのようなところで娯楽を楽しんでいる上流階級の人たちとその人たちに仕える人たちなどについてです。後に発掘されたものの多くが、ソドムとゴモラを思わせる娯楽を表現したようなものだったことにもさらりと触れました。その後は、発掘現場について学びました。いつか再現された街を見に行きたいと言っていました。
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