Wednesday, November 29, 2006

エンジニアのこだわり

数ヶ 月前、トースターが壊れた。パンを入れても手でノブを押さえていないと電気が入らなくなり、焼けたら自動的にパンが飛び出すという機能も作動しなくなっ た。仕方がないのでそのノブのところに紙を折ったものやナイフを挟んでノブを固定させて使っていた。もちろんこれだと焼き終わったことを知らせてもらえな いので、何度もトーストを真っ黒焦げにしてしまった。

それを見ていたダニエルが「危ないなぁ~、ちょっと貸して」とトースターをいじくり 始めた。 もしかして修理してくれるの?とちょっとばかり期待したのだ が、そんなはずはなかった。(その分野専門の人に修理は頼めばいいと言うに違いない。)それでも興味半分に分解してみたら中にトランジスターが入って いたとかで、どこのエンジニアがトースターにトランジスターなんぞ入れるんだと息巻い て、1分もしないうちに壊れたままのトースターを組み立ててしまった。サムがそのうち分解したがるだろうから取っておくといいと言うが、家を燃やされては 困るので今し ばらく隠しておくことにした。

さて、これで私の誕生日プレゼントはトースターに決まったようなもので、「何が欲しい?」と言われたらCostco(日本でもおなじみだよね)で見た値段がリーズナブルで何だか便利そうな機能がついたトースターをお願いしようと思っていた。

と ころが...誕生日2日前の朝食時に大きな包みを手渡された。しまった!包みを見たら電化製品は定価でしか売っていないあの 店のものではないか...と私は冷や汗。ま、でも返品することも可能かなどとそんなよからぬことを考えながら開けてみると、まぁ見るからにアンティー クな型のトースターが出てきた。

Dualitというメーカーのものらしいが、アンティークなのは見かけだけでなく、このトースターの構造 も昔のものらしく、現代でも職人がひとつひとつ手 作りしているという。「トースターはね、こういう造りが一番なんだよ」と嬉しそうなダニエル。仮に壊れてもパーツはすぐに手に入るらしく、修理も簡単なの だそう。 「でもさぁ、今のこの時代、こういうトースターのほうが値段が高いんじゃないの?」と心配する私に「そりゃぁ、そうだよ、でも僕は本当によい物を残そうと 頑固にがんばっているエンジニア達をサポートしたいからね、惜しいなんて思わないよ」と誇らしげにダニエルは言った。

ソ フトウエアエ ンジニア(ダニエルの職種)と聞けば、なんだかハイテクな感じの人たちをイメージしてしまうが、ダニエルには職人と いう言葉がぴったりだと思う。私自身、 ソフトウエアのことはよくわからないけれど、ダニエルは日頃、ユーザーのことを第一に考え、手間を省かず、妥協をせず、しつこいほどに丁寧にというのを モットーにしてプログラミングをしている。ふつうは、それはあくまでも理想論であって、現実にそんなことをしていたら採算が合わなくなるのだが...彼は たった一人でも惜しみなく残業をしてそれを可能にしようとする。そのため、以前は彼の帰りを待ちわびる私と衝突することが頻繁にあった。今は彼がゆるがな い信念を持って仕事をしているこ とを子供達にも説明できるようになり、だいぶ快くサポートできるようになった。私自身に余裕が出てきたか、はたまたあきらめの境地か?

し かし、残 念 なことに商品の質がかならずしも利益につながらないという世界では、彼のような職人は煙たがられることが多々ある。朝出勤するダニエルの後姿 が戦場に出てゆく兵士のようで、そういう日はやはり打ちのめされてボロボロになって帰ってくる。もちろんGood Dayといえる日もあって、自分の作ったもので誰かをギャフンと言わせたり、喜ばせることができた日にゃぁ、満面の笑顔と,スーパーマンのSの字を胸に掲 げて帰ってくる。

このちょっと古めかしいピカピカのトースター...なんだか見かけも頑固そう(こだわりの塊みたいな)で、ダニエルらしい贈り物だったよ。どうもありがとう!

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